狼陛下と仮初めの王妃



「女の闘いほど、陰湿なものはありませんわ。想像するだけで、震えます」


リンダはオーバーにぶるぶると震えて見せ、自らの体を抱きしめた。

きっと、先代に子供がいなかったために起こった内戦と同等のことが、この最上階で行われていたのだろう。

刃ではなく言葉や仕草での冷たい争い、嫉妬や貶めが蔓延する世界。

今日の会食での皆の態度よりもきつくて陰湿な。そう思えばコレットの体も震えた。

上流の世界というものは、本当に恐ろしい。


「でも、ご安心くださいませ。この先争いは起きませんわ。陛下は側室なんてお迎えになりませんから!なんといっても、コレットさま一筋でいらっしゃるんですもの!!」


リンダは拳を握って断言し、にっこり笑う。

陛下が即位されたときに最上階には先代の正室が住んでいて、歳も二十四歳と若く美しいため、そのまま王妃として迎えると思われていたらしい。

だが皆の予想に反して、陛下は“先の王の体制は引き継がない”と言って、実家に帰してしまったという。


「先の王妃さまは、実家に帰られてから数か月後に子爵家にお嫁入りされたそうです。お相手は、幼い頃から親しくしておられた殿方だそうですわ。その殿方はきっと、元王妃さまのことを、ずーっと愛していたに違いありません!」