陛下の一言により、一同は椅子を鳴らしてのろのろと立ち上がった。
コレットは陛下に手を引かれていき、出口近くに並んで立った。
ふたりに挨拶をして出ていく皆の顔は、当初のそれよりも明らかに意気消沈している。
どうやら偽物王妃としてのデビューは、なんとか成功したよう。
大役をこなすことができ、コレットはホッと胸をなでおろしたのだった。
最後の一人が出て行き給仕も誰もいなくなると、腰に当てられていた陛下の手が離れた。
今日の予定は全部終了し、あとはお部屋に戻って休むだけ。
お疲れさまでしたと言おうと見上げたコレットの目に、肩を揺らしている陛下の姿が映った。
銀の髪も小刻みに震えており、どう見ても普通の状態ではなく、体調が悪いんだろうかと心配になる。
「……陛下?どうしたのですか?」
腕に触れて呼びかけた途端、陛下はぷっと噴出した。
なんと信じられないことに、彼は笑っていたのだ。
手の甲を口に当てて声を殺してはいるが、おかしくて堪らないといった様子。
「あの……なにがそんなにおかしいのですか?」
コレットが首を傾げて問いかけると、陛下は我慢できなくなったのか声を立てて笑い始めた。
訳が分からないが楽しそうにしている陛下を見るのは初めてで、しばらく呆然として見つめていたが、次第にうれしくなっていく。
陛下も普通に喜怒哀楽の「楽」があるのだ。


