「お水はすべての命の源なんです。陛下が剣で国を守ってくださるなら、王妃は水のように柔らかい心を持って、民の心を潤して、いろいろな気づきを与えたり、育てたり、そんな存在でいたいと思います」
コレットが話を終えると、場が水を打ったように静まり返った。
会食の席を満たしていた好奇や嘲りの空気が消え去り、戸惑いと感嘆の間を行ったり来たりするような、複雑なものに変わっている。
皆言葉を発することができず、ミネルヴァは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
コレットの話は予想外で、普通のご令嬢ならばこんなことは言えないと思える内容だった。
おそらく『陛下を支えて、しっかり城を守ります』ぐらいだろう。
なぜなら貴族のご令嬢たちは、幼いころからそう教育されているからだ。
もしも同じことを経験していたとしても、そこから“王妃として”の答えに結び付けられるだろうか。
ミネルヴァには分からなかった。
「……我が妃の答えに異議のある者はいるか」
陛下の問いかけに対しては誰も声を発せず、うつむいて、ただ空になったグラスと皿を見つめるのみ。
ミネルヴァは喉の奥で唸り声を上げるだけにとどまった。
「ならば、これで会食は終了とする。皆、今日は大儀だった」


