「わたしは両親を亡くしたとき、すごく哀しくて、三日間なにも口にできなくて、飲まず食わずでいました。このまま命がなくなってもいいとも思っていたんです」
思い出せば悲惨な状況だった。
割れた窓に敗れた扉。
家の中は滅茶苦茶に荒らされて金品はなにもなく、ひとりぼっちで、あるのは両親の亡骸と祈りの蝋燭のみ。
外は逃げ惑う人の足音と打ち合う剣の音がしていたけれど、逃げようなどと思えなかった。
ぼんやりと炎だけは絶やさないよう気遣い、そしてだんだん短くなっていく蝋燭を自分の命と重ね合わせていた。
この火が消えたらきっと両親のもとに行けると、そう考えていた。
「そんなとき、ある人が尋ねてきて言ったんです。『しっかりしなさい!ご両親はあなたが死ぬことを望んでいません!』と。そして、コップ一杯のお水を飲ませてくださいました。それは、渇ききった体と心を潤して、気づきを与えてくれたんです。わたしは、見放されていない。ひとりじゃないんだって、教えてくれたんです」
あのとき危険を顧みずに山から下りて来たニック夫妻は、両親の亡骸を丁寧に弔ってコレットを連れ出してくれた。
いつも優しく笑うアリスとニックとは思えないほどの、気迫満点の顔だったのを思い出す。
そう、罪を犯したコレットに『逃げなさい』と言った、あの表情と一緒だった。


