「わたしは、民たちにとって、コップ一杯の水でありたいと思います」
震えながらもはっきり言うと、ざわめきが起こった。
顔を見合わせて首を傾げる夫妻もいる。
そんな中陛下だけは少しうつむいて目を閉じ、スッと口角を上げていた。
「は!?コップ一杯の水とは……これはまた異な答えですな?王妃が水でありたいなどと!」
声を立てて笑わんばかりの表情をするミネルヴァが、一同に同意を求めた。
すると各々から嘲笑する声が上がり始める。
「一国の王妃の言葉とは思えませんな。皆にとっての宝石でありたいと言うならまだしも……さすが、異国のご両親が育てられたお方と言うべきでしょうかな」
眉間にしわを寄せた難しい顔つきで北の領主がそう言えば、南の領主が笑いをかみ殺しながら後を続ける。
「王族でもない一介の騎士団長であられた陛下が望まれるお方ですから、少々変わっておられるようだ」
「でもまあ、長い時をかけて考え抜いた答えなのでしょう?どのような意味があるのか、是非、お教えいただきたいですわ」
何か理由があるなら聞いてあげましょう!と言うご婦人に、皆が同調して、再びコレットに注目した。
自信を持って言ったことだが思った以上に皆の反応が悪く、失敗したと思い震えている華奢な肩を、陛下の手がそっと包み込んだ。
陛下はコレットの背後に立ち、皆の顔を見据えている。
無言のままだが、肩に感じるぬくもりがコレットに勇気を与えてくれた。


