「あらあ、皆さんご存知ですわよねえ?王妃さまの素性のことですわ。城の侍女であるとか、下働きの娘ですとか。もう笑ってしまう噂ばかり。王妃となるお方が平民だなどと、まったくおかしな話ですもの」
ねえあなた?と、ねっとりした言い方でミネルヴァに同意を求める婦人は、唇は微笑みを作っているが目は笑っていない。
そんな婦人に頷いて見せ、ミネルヴァはさらに質問をつづけた。
「王妃さまのご実家は、ミリガン家と伺いました。が……はて、公爵家にも伯爵家にもそのような名がありません。爵位を、お教え願いますか」
ミネルヴァが質問すると、皆が一斉にコレットに注目した。
好奇とも期待とも取れる視線が彼女の答えを待っている。
家柄に関することは、アーシュレイから『もしも尋ねられたらこう答えてください』と、言われている。
コレットは震える胸を落ち着かせるよう、深く息を吸い込み、用意していた言葉を口にした。
「……わたしの両親は、隣国ハンネルの出身なんです。父は子爵家で母は公爵家でした。ふたりとも四年前の内戦で亡くなりました。わたしは、ガルナシアの生まれです」
「おおなんと、ご両親ともにハンネルのご出身とは、こちらで名が出ぬはず……ですが、それでは、あちらでは貴族と言えども、ガルナシアではまったくの平民同然ですな?」
大袈裟に驚いて見せるミネルヴァの顔が、面白い玩具を見つけたかのように輝く。


