コレットが手を絡めやすいように、低めな位置に腕を差し伸べてくる。
彼の表情は普段と変わらないようだけれど、内心は怒っているはず。
逞しい腕にそっと手を乗せると、陛下はゆっくりと歩き始めた。
そんなところも、いつもと変わらない。
「あの、陛下……?」
コレットが呼びかけつつ潤んだ瞳で見上げると、彼の眉がスッと寄せられた。
「どうした?何を考えている」
「ごめんなさい」
ぴたりと歩みを止め、ん?と怪訝そうに首を傾げる陛下に、コレットは神妙な顔つきで宝剣のことを話す。
その純粋な青い瞳が、陛下の少し困惑している様子を捉えていた。
しばらくすると陛下の長い人指し指が、コレットの唇にそっと触れて動きを止めた。
「君は、初めて会った時にも思ったことだが、私の予想をはるかに超えてくるな」
「え?」
「さっきの件は、私が悪い。だから君は、なにも気にすることはないんだ」
「でも……わたしは」
「私が違うと言っているんだ。これに関して、それ以上言葉にすることは禁ずる」
決して語気は強いものではない。
けれど眼光鋭く見下ろされ、コレットは震え上がってしまった。
幾多の敵を降伏させた狼たる陛下の瞳は、本当に恐ろしいと改めて思う。
「ほら、会食に遅れる。急ぐぞ。君は、私に運んでほしいのか?」
「い、いえ、そんなことありませんっ」
ならば歩けと促されて、素直に従う。
まもなくついた扉の前で、陛下は静かに言った。
「会食では、君は質問されたことだけに応えればいいぞ」
穏やかに思える口調だけれど、その体からは燃え立つような気が放たれている。
会食の席には、ミネルヴァをはじめとした重鎮方がすでに揃っていた。


