「その花ですよ。我が国では愛でるだけですが、異国ではサラダやデザートに使用すると聞きます」
そう言ってサーラの花を一輪手折り、コレットに差し出した。
「どうぞ、甘いですよ」
コレットは手のひらにある赤い花をじっと見つめた。
こんなに綺麗な色のお花を食べるなど聞いたことがない。
野草や葉野菜を食べるのと同じ感覚なのかもしれないが。
コレットの中の常識では、緑以外の濃い色の植物は毒があり、食べてはいけないものとなっている。
だが、紳士の言う通り美味しいのかもしれない、ならば、空腹時に食べた方が美味しさが増すのでは?と思う。
口にするのは初めてのもの、どうせなら最高に美味しく感じるときに食べたい。
じっと見つめたまま動かないコレットに対し、紳士は食べてみてくださいと、さらにすすめる。
「ありがとうございます。でも今は、朝食後で満腹なんです。お茶の時間にゆっくりいただきます」
紳士に向けて愛らしい笑顔を見せ、コレットはリンダに花を手渡した、その瞬間……。
「ミネルヴァ。そこで何をしている!」
陛下の低い声が、庭園内に響いた。
その迫力で、木の枝に止まっていた鳥たちが、ばさばさばさと羽音を立てて一気に飛び立つ。


