狼陛下と仮初めの王妃



庭園は小道が作られていた。

白いレンガで作られた道の両脇には、紫の小花や桃色の大輪の花が綺麗に咲き誇る。

脈絡なく植えられているようで、そうでない。景観のバランスを緻密に計算して作られた、とても美しい庭だ。


花の間をひらひらと舞う蝶たちのかわいらしさも楽しみつつ、小道をゆっくり歩くふたり。

すると、前方に蔓性の花をアーチに絡ませた赤い花のトンネルがあった。

アーチからこぼれんばかりに咲く花は実に見事で、コレットは声も出せずに見とれてしまう。


「あ、コレットさま。これですわ。この花が、サーラです」


リンダがハッと気づいたように言う。


「これが、そうなの……」


近づいていくにつれて、フルーツのような甘い香りが漂ってくる。

傍に寄ってよく見ると、それは肉厚な花弁が幾重にも重なっており、薔薇によく似ていた。


「……綺麗」

「お嬢さん、ご存知ですか。そのお花は、食べられますぞ」

「……え?なにがですか?」


急に背後から男性の声がして、コレットが返事をしつつ振り返ると、口ひげを蓄えた紳士がすぐ近くにいた。

いつの間に傍に来ていたのか、正装を身に纏い堂々とした姿は身分の高さを感じさせる。

紳士は、コレットたちに愛想のいい笑顔を向けていた。