狼陛下と仮初めの王妃


主であるコレットは容姿は美しいけれど、それを鼻にかけないとても純粋で素朴な人だ。

仕え始めてたった五日しか経っていないが、リンダは主のことが大好きになっている。

そして、他の誰でもない主だからこそ、陛下に恋をされたと思うのだった。


「コレットさま、仲が良くなった侍女が申しますには、内戦が始まる前は、あの庭園でガーデンパーティを催していたそうですわ。今はサーラが満開だそうですよ」

「……サーラ?聞いたことがないわ?」

「はい、異国の花ですもの。ガルナシアでは、あの庭園でしか見られないそうです」

「わあ、それは楽しみね!リンダ、早く行きましょう!」

「はいっ、コレットさま」


弾んだ声で応えるリンダの瞳はキラキラと輝いており、コレット同様にわくわくしている様子。

それもそのはずで、城へ奉公に上がったばかりの彼女も、仕事や環境に慣れるのに一生懸命なのだ。

主の前では泣き言や不安な素振りなど一切見せないが、それはもう、それなりに苦労している。

だから仕事の一環とはいえ庭の散策は楽しみで、なによりも主の表情が明るいのがうれしいのだった。


ふたりは年頃の若い娘らしく、きゃあきゃあと楽しげに話をしながら馬車道の歩道を歩く。

クリームイエローのドレスを着て、豊かな髪を風に遊ばせるコレットは、馬車道に咲く一輪の花のよう。