狼陛下と仮初めの王妃



迎えに来たリンダとともに、城の正面玄関から外に出るコレット。

キラキラと光る朝の日が、やけに眩しく感じる。

城には窓はあるが、やはり明るさが全然違うのだ。

外に出るのは、なんといっても五日ぶりこと。

解放感が喜びに変わり全身を駆け巡り、牧場で暮らしていた時のように、清んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで伸びをしたくなる。

だがそれは、貴族令嬢としてははしたないことであり、静かに深呼吸するだけにとどめた。

それでも十分に気持ちがよく、散歩できる喜びを感じていた。

リンダは、そんなコレットの横に立ちにっこり笑いかける。


「さあコレットさま。陛下がおっしゃるには、右の庭園がオススメとのことです」


リンダが示す方、城の真ん中にある馬車道の並木の向こうには、白い柵と低木に囲まれた小さな庭園がある。

リンダはサヴァル陛下から散策の供を命じられた際、『右の庭園が美しい』と言われたのだった。

普段の陛下はあまり表情がなくて何を考えているのかわからず、紫色の瞳はいつも鋭い光を宿しておりとても恐ろしい人だ。

実際に会って、巷でうわさに聞いていた通りの人だと実感している。

それが、コレットに関することになると、少しだけ柔らかい瞳になるのだ。

そんなところを見るたびにリンダは思う。

愛情がじゃぶじゃぶと噴水のようにあふれ出ていらっしゃる!と。