陛下はカップを置いて席を立ち、コレットの横に来たので慌てて立ち上がった。
見下ろしてくる紫色の瞳が、いつもよりも少しだけ柔らかいように感じる。
まっすぐに立っている陛下の手が、何かを迷うように、コレットのほうへ延びかけては定位置に戻るを繰り返している。
そのことに気づかない彼女は、じーっと見つめたまましばらく何も言わない陛下に、おずおずと呼びかけた。
「あ、あの……陛下?」
するとコレットの方へ延びかけていた陛下の手がぴたりと止まり、ぐっと拳を握って定位置に戻った。
「君は……歩くのは上達したから、もう出歩いても平気だろう」
「まさかそれは、お散歩してもいいってことなんですか!?」
飛び跳ねる勢いで喜ぶコレットに、陛下は厳しい顔つきになり強い眼差しを向ける。
「そうだ。時間があるときはいつでも散策していい。だが、いいか。君は、決してひとりでは外に出るな。必ず、供をつけるんだ」
「え?友……とは、友達のことですか?」
「違う、供だ。君がひとりで行動することは、私が許さない。本来ならばアーシュレイをつけたいところだが……今日はここでリンダが来るのを待ってろ。今朝の散歩は教育が始まる時間までの間だぞ。いいな?」
「はいっ」
アーシュレイには庭へ迎えに行けと命じておくと言い残し、陛下は食事の間から足早に出て行った。
あとに残されたコレットは、初めてのことにわくわくと胸を躍らせ、リンダが来るのを待った。


