今、城の中には誰もいなくて、コレットひとりきりのように思えてしまう。
しーんと静まる部屋の中を見回すと急に孤独感が増して、牧場が恋しくなり胸が締め付けられる。
偽物王妃の務めを果たして国の平和を守ると決めたのに、もうくじけてしまいそうだ。
視界がぼやけ始めて、くすんと鼻をならすと、コンコンと扉を叩く音がした。
「コレットさま、お茶をお持ちしました」
「あ、はい。どうぞ」
急いで目に滲んだ涙を拭いて、扉の向こうに返事をすると、リンダが顔をのぞかせた。
「失礼いたします」と言って、小さなワゴンを部屋に運び入れる。
「コレットさま、お妃教育お疲れさまですわ」
そう言ってにっこり笑うリンダだが、ベッドの上に座っている主を見てすぐに顔を曇らせた。
ワゴンを扉近くに置いたまま駆け寄るようにしてベッド脇まで行く。
「お顔の色が優れませんわ。医師を呼びましょうか」
「リンダ、平気だから心配しないで。お城の生活に慣れてなくて、少し疲れちゃっただけなの」
努めて明るい声を出し、笑顔を作って見せる。
陛下の婚約者が沈んだ顔をしていては、どんな噂がたってしまうか分からない。
アーシュレイに言われているのだ、偽装だとばれないように気を付けてくださいと。
「そうですか。それならいいんですが……体調が優れないときは早めにおっしゃってくださいね。コレットさまは、陛下の大切なお方ですもの。お体になにかあれば大変ですわ」


