「はあぁ、疲れちゃったわ……」
教育を終えて自室に戻ったコレットは、しなだれかかるようにしてベッドに座った。
アーシュレイはすごく厳しくて、容赦がない。
『よろしいですか。あなたの教育の期間は、例えるならウサギの尻尾よりも短いのですよ!』
そう言ってメガネを光らせるから、コレットは逆らえない。
今日はずっと歩く練習をしていた。
『姿勢よく美しく歩くためには』の講義から始まり実技まで。
頭に分厚い本を乗せて、部屋の中を何往復しただろうか。
おかげで上達したけれど、足が痛くなってしまった。
本当なら横になって休みたいところだが、そんなことをしたらドレスがしわになるからぐっと堪える。
いつも着ている木綿のワンピースなら、草の上でも平気でゴロゴロ転がれるのに。
綺麗なドレスを着ていると、行動が制限されてしまってとても不便だ。
牧場の生活はのんびりしていて自由があった。
休憩時間には、ぽかぽかと日のあたる草むらでお昼寝をしたこともある。
風に吹かれてさわさわと揺れる木の葉の音に、鼻をくすぐる草花の甘い香り。
のんびりと鳴く牛の声を子守唄に、自然を感じながら眠るのはとても気持ちがよかった。
絶えずなんらかの音がしていて賑やかで、いつもぬくもりがあった。
だけど、この(仮)婚約者の部屋は物音ひとつしない。
とても広くて美しい部屋だけれど、冷たく感じる。


