「ですが、陛下はまだ妃を迎える段階ではないとお考えなのです。これはあなたには難しい話で、内政や外交などが関わることでお話はできません」
そこまで言うと、アーシュレイはなにかを迷うようにテーブルの上に瞳をさまよわせる。
そして意を決したように顔を上げて、口を開いた。
「毎日のように来る縁談を断るのが面倒になったのか、陛下は、ついおっしゃってしまったのです」
「……なんて、おっしゃったんですか?」
コレットが真剣な眼差しを向けると、アーシュレイも同様に返してくる。
なにやら余程重大なことを言ったのだと、コレットは覚悟したのだった。
「『縁談は必要ない。妃ならもう決めてある』と」
「あ、決めたお方がいるなら、その方をお迎えすればいいのでは……?」
「いいえ、そんなお方は存在しません!断言できます。陛下は、今も昔も、まーったく女っ気がないお方なんです!」
アーシュレイは頭を抱えるような仕草をして、さらに話を続ける。
それが丁度ひと月ほど前のことで、おかげで縁談はぴたりと止み、このままうやむやにできると考えていた。
ところが、大臣たちはそれならそれで早く婚姻を結ぶよう要求してきた。
どうすればよいかと案じていたところ、コレットが罪を犯した。
若い娘であり容姿も美しい。
そこで、お沙汰として、偽の王妃を仕立てることを考え付いたという。
それは、主にアーシュレイの提案で、陛下に強く勧めたことだと話す。


