狼陛下と仮初めの王妃



昨日は『君を、私の妃とする』とのお沙汰を申し渡されただけだ。

一時的というのは、いつまでか。

今の彼の口ぶりでは、とっても長い期間だと感じてしまう。

コレットはおずおずと口を開いた。


「あの、すみません……訊きたいことがあるんですが」

「質問ですね。なんなりとどうぞ」

「一時的な王妃とは、いつまでなんでしょうか?」


そう尋ねた途端、アーシュレイの顔色が変わった。

メガネの奥の瞳が鋭くなり、体全体が剣呑な空気を孕む。


「あなた、それ、訊いちゃいますか……」


ぽつんと呟いた声は抑揚がなく、静かだけれど背中がゾクッとする恐怖を感じさせるもの。

狼陛下の右腕と称されるアーシュレイの腹黒な一面が垣間見えた瞬間だ。


頭が切れる軍師として騎士団や大臣方が一目置く存在。

敵に回すと怖い男。

内戦を収めた立役者のひとり。

それらが、城でのアーシュレイの評価である。


だが余裕のないコレットはそんなことにはまったく気づかず、まっすぐに質問を繰り返す。

だって彼は家を出るときに言ったのだ、すぐに帰れると。

ニック夫妻がコレットの帰りを待っている。

すごく心配してるはずなのだ。これが訊かずにいられようか。


「はい。知りたいですっ。牧場にも連絡したいんですっ」


胸の前でお願いする様に手を組み合わせ、いつ帰れるのかと、アーシュレイに詰め寄るコレット。

青い瞳には切実な色をのせ、じっとメガネの奥を見つめる。