コレットは一度も姿を見たことがないが、外見も獣のように恐ろしいお方だと思っていた。
でもそれでも、国中の人々が、国王陛下には感謝し尊敬の念を抱いていると思う。
今の国の平和は、陛下の力のたまものなのだから。
でこぼことうねった山道でもなんとかミルクをこぼさずに済み、平たんな道に入ったおかげでコレットの緊張が解ける。
城に近づいていくにつれて石畳の敷かれた道に変わっており、もう荷馬車がはねてミルクがこぼれる心配がない。
次第に景色を見る余裕ができ、道中を楽しみ始める。
周りの家並みも立派なもので道行く人も上等な身なりをしている。
商店の建ち並んだ通りは、買い物をする人でいっぱいだ。
久々に大勢の人の活気に触れたコレットはわくわくし、お上りさんのようにキョロキョロしながら馬の手綱を引いていた。
『配達が終わったら商店で買い物をしてくるといいよ。都に下りるのは久しぶりだから、楽しんでおいでよ』
アリスからはありがたい言葉と少しのお小遣いをもらっている。
洋品店に手芸店など、間口を見るだけで胸が躍ってしまう。
早く配達を済ませてゆっくり見て回りたいものだ。
そんなうきうきした気分で進んでいると、前方に大きな噴水のある広場が見えてきた。
そのそばに、腰に剣を携えた騎士たちがいるのが見える。
「……素敵。見回りかしら」