狼陛下と仮初めの王妃



コレットは、誘惑している自覚があるのかないのか、サヴァルの手を離そうとしない。


「君は今、なにを考えている?」

「はい。わたし、ついさっきまで、ここにいることが信じられなかったんです。今日起きたことが全部幻みたいで……。結婚式を挙げて皆に祝ってもらったのに、おかしいでしょ?」

「幻とは心外だぞ。私は消えたりしない」

「はい。だから陛下の手に触れて、とてもあたたかくて、そばに戻ってきたことが実感できて……それが今、すごく嬉しいんです」


そう言って、ますますサヴァルの手を胸に押し当てる。

唇は微笑みを作り、瞳は伏せぎみにし、確かに幸せそうな表情だ。

誘惑するつもりはさらさらなく、純粋な気持ちからの行為だろう。


そうだ。コレットは天然だった。

そのおかげでサヴァルは、何度も悩ましい夜を過ごしたのだった。

悩ましければ自室にある立派なベッドで眠ればいいんだが、そうすることができず、毎夜悶々と過ごしていた。

まったくもって、よく堪えたと思う。

自分の腕の中で眠るコレットを見ていたい、そばにいたいという気持ちが遥かに上回り、じっと我慢する方を選んだのはサヴァル自身なのだが。

だが、それも今夜で変わる。