そして、その夜──。
サヴァルは新品の夜着を着、王妃の部屋を訪れるべく廊下を歩いていた。
新品とはいえ色とデザインは同じで、見た目はちっとも変わらないが、初夜の仕切り直し、心機一転のつもりだ。
廊下の一番奥にある扉を静かに開ければ、部屋の中には灯りが点っている。
先夜は無人で暗くて空気も冷たく感じられたが、今夜はぬくもりを感じる。
灯りが点っているせいもあるが、そんなのは十割のうち一割にも満たない些細な違いだ。
限りなく十割に近い要因が、サヴァルの目を釘付けにする。
薄紅色の夜着を身に着けたコレットは、今夜はひじ掛けの椅子ではなくドレッサーの前にいる。
寸前まで髪を整えていたようで、ブラシを置いて、少し気恥ずかしそうに微笑んだ。
「陛下、お仕事お疲れさまです」
お沙汰の期間に何度も耳にした台詞だが、今夜は特別な言葉に聞こえる。
「……そばに来い」
白磁のようになめらかで美しい肌は、少し紅潮している。
柔らかな頬に触れると、小さな手がそっと重ねられた。
「陛下の手は、すごく温かいですね」
「君に触れるために、温めてきたんだ」
「まあ、わたしのために?」
コレットは嬉しそうにくすくすと笑い、自分の頬にあったサヴァルの手を胸元に引き寄せ、大切そうに抱えた。
柔らかな胸の感触がサヴァルの手に伝わり、理性は風前の灯火となる。


