狼陛下と仮初めの王妃



そして、コレットが牧場に戻ってから二日目のこと。

ガルナシアの騎士団がアルザスの山を登っていた。

白い制服の中に、ぽつぽつと二色だけ違う色が混じっている。

その一行は山を登り切るとニックの牧場に入っていき、赤い屋根の家の前で止まった。

ザクッと、地面に降り立つ音を聞いて、家の中で手仕事をしていたアリスが首を傾げた。


「ねえ、誰か来たみたいだよ、ニック」

「ああ、なんだか大勢来たみたいな音だな?」


のんびりと会話をするふたりは、ふと顔を見合わせて眉を寄せた。

牧場に大勢の人が来ることなど、今まで一度もなく、なんか嫌な予感がする。

同時に家の戸がノックされて、ふたりは息をのむ。

もう一度ノック音がして、ニックが意を決したように立ち上がった。


「よし、俺が出る」


一応護身用の棒を持って、向こう側に「はい?」と声をかけつつそっと戸を開けた。

すると、ブラウンの髪の綺麗な女性が少し緊張した面持ちで立っており、ニックを見てにこっと笑った。

手には、なにやら大きな荷物を持っている。


「あの、どちらさまでしょう?」

「失礼いたしました。私はリンダと申します。あの、コレット・ミリガンさまは、ご在宅でしょうか?」

「ああ、コレットなら、今牛小屋にいますが……」

「まあ、牛小屋とはどこでしょうか?」


ああそれなら向こうの……と指さしながら外に出たニックの目に、居並ぶ立派な騎士たちの姿が映った。

あまりの風格にギョッとしてしまい、再びぎくっと腰を痛めそうになる。