狼陛下と仮初めの王妃



「でも、それが異なことで……。我が娘のナタリーが、幼い頃にあなたと遊んだ記憶があると言うんですよ。絶対に、お針子の人が連れて来た女の子だと言い張るんです」


ナタリーの名前を聞いたコレットの胸が、ドキンと脈打った。

陛下とアーシュレイは、無言のままミネルヴァの話を聞いている。

その様子を見てにやりと笑ったミネルヴァは、更に続けた。


「だから私、当時の帳簿を調べ、侍女たちにも話を聞きました。そうしましたら、確かに、お針子のジェシー・ミリガンが連れて来た女の子、コレットさまとナタリーが遊んでいたと分かったのです」

「……わたしは、覚えていません」

「そうでございますか。ですが、このミネルヴァ、もしかしたらと予感がしまして、更に調べたのでございます。そうしたら!なんと!ミリガン家は生粋のガルナシア人だった、ということが分かったのでございます!」


ミネルヴァは、鬼の首を取ったような勢いで更にまくしたてる。


「ハンネル出身などと嘘を申すとは、実に不届きなことですなあ。王妃にあるまじきことでございます。更に!王妃さまは大事な鍵を失くされております」


ミネルヴァは陛下に向き直ると、ポケットの中から鍵を取り出してヒラヒラと振って見せた。


「陛下、鍵は廊下に落ちておりました。嘘の身上のうえ、鍵の管理不行き届き。この二つを鑑み、コレットさまは王妃に相応しくないお方だと、進言いたします」