狼陛下と仮初めの王妃



城に戻ったコレットたちを待ち受けていたのは、心配顔のリンダではなく、にやけ顔のミネルヴァだった。

城の入り口で恭しく頭を下げ、感慨深そうに目頭を押さえる。


「陛下、王妃さま。ご無事でなによりでございます。本当に、ようございました。このミネルヴァ、一睡もせずにご心配申し上げておりました。ええ、食事も喉を通らずに、邸にも戻っておりません」


ミネルヴァは如何に自分が心配していたかをアピールし、指先だけでは物足りないと、胸ポケットからハンカチを出して目を押さえた。


「ミネルヴァ、御託はいい。それよりも、私に言いたいことがあるのだろう。聞いてやるから、執務室に来い」

「はい、陛下。できれば、王妃さまもご一緒にお願いいたします」


したり顔でそう言うミネルヴァに、陛下は一瞥を返した。


「分かっている。アーシュレイも一緒だ」


陛下に肩を抱かれるコレットと、満面の笑みのミネルヴァ、それに無表情のアーシュレイが続く。

陛下の執務室に揃うと、そわそわした様子のミネルヴァがさっそく口を開いた。


「王妃さま、お疲れのところ実に申し訳ありませんが。あなたにお尋ねしたいことがございます」

「はい、なんでしょうか」

「先に王妃さまは、ご自分のご両親は異国の出身だと、おっしゃられましたな?」

「……ハンネルの貴族です。それが、どうかしましたか?」

「そう、ハンネルでございました」


ミネルヴァは何度も大きくうなずいた後、くいっと首を傾げた。