狼陛下と仮初めの王妃



剣を持った陛下は強い。

コレットを庇いながらも敵を次々に倒していく。

コレットは短剣を握りしめて、敵の動向に目を配る。

矢を構える敵を見つけたら陛下に声がけし、自分に近づきそうな敵がいたら短剣をめちゃくちゃに振り回して見せた。

とにかく、陛下の足手まといにならないよう必死だ。

けれど、いくら陛下が強くても多勢に無勢。

次第に陛下に疲れが見え始める。

息が上がり、剣を振る腕が遅くなっていた。


「そろそろ、お疲れのようですね。陛下?」


ジフリードがにやりと笑って、落ちていた剣を拾った。


「私でも、倒せるかもしれませんなあ」


ジフリードが剣を構えた。そのとき、遠くから蹄の音が聞こえ始めた。


「……なんだ!?」


土煙をあげて近づいてくるそれを見て、敵が色めき立った。

逃げ出す者もいれば踏みとどまる者もいて、ジフリードが必死に叫んだ。


「お前ら、逃げるな!金返せ!」


白い服を着て剣を振りかざし、猛スピードで近づいてくるのは騎士団だった。


「陛下!ご無事ですか!!」


素早く馬から飛び降りたアーシュレイと騎士団長が陛下の前に立ちはだかり、剣を構える。


「遅いぞ、アーシュレイ」

「申し訳ありません。見張りをつけていたところすべてに動きがなかったものですから、判断が遅れました。ですがさすが、陛下。ご無事でなによりです」

「まったくだ。彼女に傷ひとつでも負わせていたら、貴様の首を絞めていたぞ」


ギンと睨みを利かせる陛下を見て、アーシュレイは渇いた笑いを返した。

とても冗談とは思えない。