狼陛下と仮初めの王妃



沈んでいるコレットの手を握る陛下の手のひらがゆっくり移動し、がっしりと体を支える。


「ところで、ジフリード。リシェルさまは貴様が生きていることを知っているのか」

「いいえ。存じません。ですが、いつか陛下はリシェルさまのところに来られるだろうと思って張っておりました。騎士団をお連れになるかと思いきや、おふたりのみ。この機会を逃さない手はありません」


陛下は手綱を握る手にジリリと力を入れ、馬は動かされる気配を感じて、ブルルッと頭を振った。


「貴様、私を誰だと思っている。そう簡単に、やられはしないぞ」

「陛下。昨日は見事な手綱さばきを見せていただきましたが、今日は、そうはいきませんぞ!お覚悟を!!」


ジフリードが合図をすると一斉に矢が放たれ、陛下は馬を走らせるのと当時にコレットの体ごと飛び降りた。

馬は敵をなぎ倒して走り、矢は身を伏せた陛下の頭上をかすめてまっすぐに飛ぶ。

矢は敵の体に刺さってしまい、悲鳴を上げる声があちこちで響いた。

敵が狼狽えてざわつく中陛下は剣を持つ敵に素早く近づき、短剣をシュンッとひと振りして腕を斬った。

剣がガランと音を立てて落ち、敵は斬られたところを押さえて座り込む。

陛下は素早く剣を拾いあげて構えつつ、短剣はコレットに差し出した。


「君はそれを持って、私のそばにいろ。なにがあっても離れるな」

「は、はいっ!」