「そこは、利用できる人がいますから」
ジフリードが意味ありげな笑みを浮かべると、マリアがクスクスと笑った。
「まさか、ミネルヴァ、か?奴も、この件に噛んでいるのか」
「いいえ、ミネルヴァ大臣など、小者だわ。王妃付きの侍女だったこの私に、金をチラつかせて、再三書庫の鍵を盗むように依頼してきたわ。王妃を陥れたいと」
ミネルヴァにはそれくらいしかできないの!と言ってケラケラ笑うマリアに、コレットは尋ねた。
「じゃあ鍵は、マリアが盗んだんじゃないのね?」
「私は、ミネルヴァの誘いに応じていないだけ。でも、書庫の鍵を盗んだのは、私」
「それなら今、鍵を持っているの?」
返してほしいと請うコレットに、マリアは首を横に振った。
「持っているのはミネルヴァ大臣。盗んだ後、彼の部屋の前に落としておいたの。見つけたときの彼の喜び具合ったらもう、とてもおかしかったわ!」
声を立てて笑うマリアは、鍵を盗んだのはほんの遊び心と国王夫妻を動かすことが目的だったと、不敵な表情をする。
「ミネルヴァ大臣には、それなりの権力があるわ。だからこれから大いに利用させてもらうの!」
野望成功が間近だと確信しているマリアはケラケラと笑い、その様子は狂気に満ちている。
リンダの下で働いていたマリアにこんな姿を見せられるとは、コレットは夢であってほしいと思う。
侍女として城に来たのは、内偵するためだったのか。
向けてくれた笑顔は全部偽りだったのかと、哀しくなった。


