狼陛下と仮初めの王妃



「ジフリード……貴様、生きていたのか。慈悲深いとは聞いてあきれるぞ」


狼のような威光を彼らに向けている陛下に、コレットはおずおずと声をかけた。


「あの人は誰なのですか?」

「ユーリス王の医師だ。内戦の折りに刃にかかって命を落としたはずだが……」

「ユーリス王さまの……じゃあ、毒をリシェルさまに渡した人ですか!?」


確か、リシェルが『身の行方はわかりません』と言っていた人だ。

彼が敵のボス……裏山でコレットを狙って来たのも彼なんだろうか。

コレットが呆然としていると、女性の凛とした声が輪の中から響いた。


「王妃さま、私もいましてよ。お元気そうでなによりですわ。まあじきに、この世とさようならになりますが」


馬の陰から現れた若い女性がジフリードの隣に立ち、コレットに冷たい微笑みを見せる。

女性は質のいいワンピースを着ており、平民とは違う上品な雰囲気を醸し出している。


「マリア……あなたもいたの?」

「ああそうでした。ご挨拶が遅れましたな。王妃さま、お初にお目にかかります。ジフリード・マイセルと申します」


ジフリードは、コレットに恭しく礼を取って見せる。

先代王の医師とマリア、いったいどんな関係なのか。

どうしてふたりの命を狙ってくるのか、コレットは混乱してしまう。

その傍らで、陛下は落ち着いた様子を見せている。

コレットの手を握り「私に任せろ」と耳打ちをした。