狼陛下と仮初めの王妃



翌朝、日が昇るとともに起きて出発したふたりは木こりの使う道を辿り、すぐに大きな道に出ることができた。


「……これは、元の道だな」


陛下の視線の先に、街道であることを示す立て看板がある。

ここは、しばらく進めば都街に通じる道に出られる場所だった。

体力を回復した馬に乗り、辺りを警戒しながら進む。

まだ早朝と言ってもいい時間。

このまま敵に見つかることなく、無事に都街に着くことを願う。

静かで、馬の蹄の音だけが辺りに響き、とてものどかだ。

もう敵は諦めて襲ってこないかもしれない。

コレットがそう思ったのも束の間、陛下が突然馬を走らせた。


「しまった、気づくのが遅かったか」


陛下が悔しげにつぶやき、馬が速度を落としていく。


「え……まさか」

「奴等に囲まれた」


前方と背後に横からも、両方の木立の中から馬と人が飛び出て来て、ふたりは囲まれていた。

金で集められたのだろう、荒くれた風貌の者もいれば、それなりに身なりが整っている者もいる。

そのうちの何人かは弓をかまえて、今にも矢を放ちそうにしていた。


「あーこらこら。まだ、殺してはいけませんよ。まだ、ね」


敵の輪の中から前に進み出て、にんまりと笑って一礼をしたのは身なりのいい紳士だった。


「いくらなんでも、訳も知らずに殺されては堪らないでしょう。私はこれでも、慈悲深いつもりですから。お久しぶりですな、サヴァル殿……いや、今は陛下でしたな」