狼陛下と仮初めの王妃



しかしどれだけ歩いても木ばかりが続き、日が傾いて次第に辺りが暗くなってきた。

森の中の夜は月明かりが届きにくく、平地よりも遥かに暗いもの。

このまま歩き続けると、方向を見失って迷う危険がある。

道らしきものは、まだ見えてこない。

そんなとき、陛下がぽつりと言った。


「ここは、木こりの管理している場所だな」

「え?どうしてそう思うのですか?」

「見ろ。木の枝が落とされてきちんと手入れがされている。おそらく、近くに木こり小屋があるはずだ」


確かに周りの景色が変わってきていた。

整備されているというべきか、見通しが良くて歩きやすく、月明かりも届きやすい。

ふたりして建物らしきものを探しながら歩くと、木々の向こうの少し拓けたところに、小さな小屋があった。

中には大きな斧やノコギリが置いてあり、壁際には切りそろえられた丸太が整然と積まれている。

まったくの作業小屋で土の床だが、夜露はしのげる。

今夜はここで休むことにし、馬は軒下に繋いだ。

陛下が小屋の中を調べている間、コレットは所在なく立ちすくんでいた。

小さな窓から月明かりが射し込み、時折吹く風が戸をカタカタと揺らす。

陛下は大きな布を見つけ出し、壁際の床に広げ、コレットに座るように促した。


「寒くないか?」

「少しだけ、でも平気です」