コレットは、荒い息をしている馬の鼻面をそっと撫でた。
ふたりを乗せて全力で走り続けた馬は、へとへとの状態で立っているのもやっとのよう。
本当によく頑張ってくれた。
「ありがとう。逃げられたのは、あなたのおかげだわ」
疲れてふらふらだが目は力強く、さすが陛下の愛馬だと感心する。
でもよく見ればあちこちから血が出ており、小さな擦り傷がたくさんあった。
「陛下、水が要ります」
「そうだな。川は、あっちだろう」
川はすぐそばにあった。
手綱を引いて斜面を下りると、馬はさっそく美味しそうに水を飲み始める。
コレットは腰に着けている巾着からハンカチを取り出して水に浸し、丁寧に馬の傷口を拭いた。
馬の脚には、刃物で付いたような軽い切り傷もある。
敵が矢か剣を投げたのかもしれない。
陛下にあたらなくてよかった……と心底ホッとするが、馬がこんな状態ではふたりを乗せるのは無理だ。
「よし、そろそろ出発するぞ」
「でも馬はまだ疲れています」
馬は草を食み、体力回復をはかっている。
できればもう少し休ませてあげたいと言うコレットに、陛下は首を振ってみせた。
「だから、歩くんだ。あんなにしつこく追ってきた敵が、すんなり諦めるはずがない」
振り切っただけの敵は、ふたりを血眼で探しているだろう。
じっとしているのは危険なのだ。
「絶対に、私のそばから離れるなよ」
陛下は馬の手綱を持ち、コレットは陛下の服を掴む。
木は隠れるのにちょうどいいが死角も多くなる。
敵がいつ襲ってくるとも分からない中、周りに気を付けながら、ふたりは出発した。


