狼陛下と仮初めの王妃



『サヴァル陛下、コレット王妃。今度はぜひハンネルに来てくれ。また会おう!』


エドアールが爽やかな笑顔を残して帰国していった翌日、コレットは陛下と一緒に先の王妃の家に向かった。

陛下は平服でコレットは綿のワンピースを着、通用門から早朝に城を出発した。

お出かけは極秘。

行き先はアーシュレイにしか伝えずふたりだけにしたのは、静かに暮らす先の王妃への気遣いだ。

そして国王夫妻らしからぬ格好は、敵の目を欺くため。

あの夜、マリアの実家はもぬけの殻で捕まえることができず、敵の正体が未だハッキリしない。

ミネルヴァに尋問したら、こんな答えが返ってきたそう。


『王妃さまが血眼で探すものと言ったら、宝剣か鍵でしょう。宝剣は大きくて見つかりやすいが、鍵は小さい。となれば、自然とそう思うでしょう』


もっともらしくて、陛下たちもそれ以上尋問できないでいる。

陛下は剣を隠しているが、護身用の小さなもの。

あくまで、平民カップルの遠乗りデートを装っていた。

先の王妃の家は東の領地にあり、順調に行けば昼前には着く。

コレットは領地に行くのが初めてで、それなりに道中を楽しんでいた。

都街を抜けて山道を東に向かえば、家が散見し始める。


「もうすぐ着くぞ。ほら、あの家だ」


休憩なく馬に乗り続けてコレットのお尻が痛くなった頃、陛下が前方を示した。