狼陛下と仮初めの王妃



とんでもないですと言ってぶるぶると首を横に振ると、リンダはクローゼットからピンク色のドレスを持ち出した。


「ではこちらは?」

「それも無理です!」


半ば押し問答となり、業を煮やしたリンダは「では問答無用ですわ!」と眉を吊り上げ、コレットにペールグリーンのドレスを強引に着せつけた。

そしてリンダの手は、顔と頭の周りをこまごまと動く。

逆らうのを諦めてされるがままになるコレットだが、この部屋には鏡がないために自分がどんな状態にあるのかさっぱり分からないでいた。


「さあ、出来上がりましたわ。完璧でございます」


やれやれと額の汗をぬぐう仕草をしたリンダに連れられ、コレットは建物の外に出る。

すると待っていたメガネの騎士は、姿を見るなりヒュウッと口笛を吹いて目を丸くした。


「あの、これはいったいどういうことでしょう?」

「言いませんでしたか?陛下に会うための準備ですよ。さすがリンダ、完璧です」


褒められたリンダは少し頬を染めて、うれしそうに微笑んだ。

そして、紙らしきものをメガネの騎士に渡している。

メガネの騎士はその紙を懐に仕舞って懐中時計を取り出し、スッと眉を寄せた。


「結構時間を取りましたね。急ぎましょう。陛下がお待ちです」


コレットはふわりと抱き上げられ、再び馬に乗せられた。