狼陛下と仮初めの王妃



「おや?散歩、ですか。私はてっきりお探し物の最中かと思っておりました。大変お困りのご様子だったと役人から聞き及び、このミネルヴァが、微力ながらお助けしようとしましたが……」


コレットをじろりと眺めたミネルヴァは、仰々しく喜んで見せた。


「散歩ということは、もう発見されたんですな!それはひと安心でございます。私は、相当に大事なものをなくされたのだと、案じておりました」


訳知り顔でうなずいたあと、ミネルヴァは目をギラッと光らせてニヤッと笑う。


「失くされたのが、例えば、書庫の鍵であるとか」

「え……?」


コレットの胸がギクリと脈打ち、顔が青ざめるのを自覚する。

どうして、ミネルヴァは失くしたものが分かるのだろうか。

それとも、あてずっぽうで言っているだけだろうか。

そんな反応を見て、ミネルヴァはにやけながらも深々と頭を下げた。


「おおおこれは、どうやら違うようですな。大変失礼致しました」


謝罪の言葉を述べながらも、ミネルヴァは嬉々とした表情をしている。

図星であることを、気づいているよう。


「書庫の鍵を失くすなど、そんな愚かな人は王妃にふさわしくありません。早々に座を退くべきと存じます。まあ、王妃さまには関係ないことですかな!」


声を立てて笑った後、では失礼、と言ってミネルヴァは足早に立ち去って行く。

呆然と立ち尽くすコレットに、騎士たちが小声で進言した。


「王妃さま。ミネルヴァがなにかを知っているかもしれません。内密に調べさせましょう」

「はい、お願い、します」


今は部屋に戻るべきですと言われ、コレットは素直に従った。