狼陛下と仮初めの王妃



「うそでしょ」


血色のよかった顔が、一気に青ざめていく。

陛下からもらった書庫の鍵がないのだ。

宝剣の下に隠れているかと思いきや、影も形もない。


「もしかして、落としたの!?」


持ち出すときはいつも首にかけていて、最後はエドアールが来た前日のこと。

確かに宝箱に仕舞ったはずだが、記憶違いだろうか。


『大切なもの』

『世継ぎの王子が持つ鍵』


「え、え、え、どうしたらいいの??」


コレットはパニックに陥り、宝箱を持ったままうろうろと部屋の中を歩き回る。

陛下から預かった大事なものを失くすなんて、なんたる失態だろう。

落とし物として届けられていればいいが、そうでなかったらどうしたらいいのか。


「とにかく探さなくちゃ!」


首のあざを恥ずかしがっている場合ではない。

コレットはなりふり構わず部屋を飛び出し、ドレスの裾を持ち上げてよたよたしながらも小走りになる。

そんなコレットの横目に白い影が通るのが映って、シュンと吹く風が髪を揺らし、次の瞬間にはひざまずくふたりの騎士がコレットの前にいた。

素早い動きで行く手を阻んだふたりは、騎士団の中でもトップを争う精鋭の者たちだ。


「王妃さま。お待ちください」

「今の時間、最上階からの移動は許可できません。お止めするよう、陛下に命じられています」