狼陛下と仮初めの王妃



ほかほかと湯気が立ち上りツルツルピカピカになったコレットは、ローブのような服を着せられて、お風呂の隣の部屋に入れられた。

そこにあるものを見て、声を失う。

壁側にあるクローゼットの扉が開けられており、赤や黄色に青など、色とりどりの服がたくさんかけられていたのだ。


「これが、囚人服、なの?」


首を傾げるコレットに、リンダは眉を下げて申し訳なさそうな顔を作る。


「急ぎの手配でしたので、種類が少ないのですわ。ですが、リストにあった色は全部取り揃えてございます。お嬢さまには、そうですわね……こちらがぴったりお似合いです!」


リンダが手に取ってびらっと広げたのは、目にも鮮やかなペールグリーンで、胸にも袖にも裾にもレース飾りが施されたもの。

思わずリンダとドレスを交互に見て、目をごしごしとこする。

でもそれは、片目をつぶっても半目にしても、紛れもなく立派で豪華なドレスに見える。

到底牧場の娘が着るものではなく、ましてや、コレットは罪人だ。

美しいドレスを着た姿を見て、怒りをあらわにする狼陛下を想像して震えてしまった。


「そんなの、着られません」