「……今日は、針を持っていないんだな」
「ついさっきまで、リンダとお話をしていたんです。だから、刺繍はお休みです」
「そうか」
陛下の腕の優しさと口調は、いつもの夜と変わらない。
けれどコレットを見る瞳は、やはり違っているように思う。
甘さの中にある鋭さは、まるでふたりの間に一線を引いたような、一歩退いたような、そんなよそよそしさを感じさせる。
それは、コレットがお沙汰の終わりが近いことを予感しているせいだろうか。
上流貴族のご令嬢が一堂に会した今夜、アーシュレイが本物の王妃候補を見つけているに違いない。
ぬかりのない彼ならば、チェックしているはずなのだ。
終了を告げられるまでの間は、精いっぱい陛下に尽くそうと思う。
どのくらいあるか分からない限られた時を、有効に使わなければならない。
焦りを感じるコレットだった。
「わたし、陛下に訊きたいことがあるんです」
コレットは、スッと細くなった陛下の瞳をじっと見つめた。
国王の本当の死因など、もうすぐ部外者となる者には教えられないと冷たく返されるかもしれない。
それでも、コレットは訊かずにいられない。
教えてほしい。そんな切なげに揺れる青い瞳と真面目な顔を見、陛下は腕をほどいて向き直った。
「君が私に質問とは珍しいな。しかも、かなり重要なことだろう?」
「はい、先代のユーリスさまがどうして亡くなったのか、陛下は知っていますか?年表には、原因不明と書かれていました」


