狼陛下と仮初めの王妃



女性とはいえ、他人に裸を見られるのは初めてのこと。

そわそわと落ち着かないコレットに対し、リンダは手慣れたふうでてきぱきとワンピースをたたみ、布と石鹸を準備している。


「こちらにいらしてくださいませ」

「あ、あの、洗うだけなら自分でできますから、あなたは離れていてください」


裸を見られた上に、触られるなど冗談ではない。

道具を渡してもらおうと手を出せば、リンダはそうはさせまいとばかりに背中に隠して首を横に振った。


「そういうわけにはまいりませんわ。清潔にすることもですが、お体をお調べすることも、このリンダは仰せつかっておりますので」

「体を調べるとは、それは、どういう意味で……?」

「そうですわね。簡単に申し上げますと、お嬢さまのお肌に傷がないか、ということですわ。さあ、お覚悟を決めて、私にお任せくださいませ」


布と石鹸を持って迫るリンダの瞳がキラッと輝き、コレットはこくんと息をのむ。

この仕事に関しては百戦錬磨であろう彼女の迫力に負け、渋々ながらも体を預けた。

髪はもちろん指の間に爪の間まで、すべての部分を丁寧に磨かれて湯船に浸かる。

湯に浮かべられた薔薇の花からほんわりと甘い香りがし、コレットの身と心を和ませる。