まっすぐに見つめてくる紫の瞳の中心には、コレットしかいない。
強い光の中にもぬくもりがある瞳が徐々に近づき、額にそっと唇が触れた。
「練習を思い出せ。君は、完璧だ」
胸がきゅんと痛むのと同時に、アーシュレイのバイオリンの音と、へとへとになるまで踊ったことがありありと蘇った。
「はい、陛下」
楽士が奏で始めた音楽は、あのときの中の一曲。
コレットはダンスの始まりの挨拶をし、差し出された陛下の手をとった。
まだそれほど日が経っていないのに、妃教育を受けていたのが、遠い過去のことのように思える。
それだけ日々が充実しているということだろうか。
あの頃の陛下は、体を貫かれるように瞳が鋭くて、コレットには恐ろしいばかりだった。
けれど今は違う。それは見慣れたせいもあるだろうが、毎日話したり触れられたりしているうちに、陛下の不器用な優しさが伝わってきたからだと思う。
彼の狼のような威厳も瞳の鋭さも、出会ったときとなんら変わらないのに、目の前にある紫の瞳はあたたかくて柔らかく見える。
彼に恋してしまったコレットだけが、そう思えるのかもしれない。
あとどのくらいの日々を、彼の傍で過ごせるのだろうか。
今日の夜会で、本物の王妃となるべき人を見つけてしまうかもしれない。
いきなり始まった城の生活は、いきなり終わることもあり得るのだ。


