狼陛下と仮初めの王妃



その中に、エドアールの姿も見つけた。

さすが優雅なリードぶりで、思わず見惚れそうになるコレットだけれど、まさか今からダンスを踊るの!?と、ようやく気づいた。


「え、え?陛下?」


心の準備がまだですと伝えたいけれども、すでに行動を起こしてしまっている今は、周りの状況がそうさせない。

陛下に手を引かれて中央に進み出るコレットの瞳に、「見ろ、国王夫妻が踊られるぞ!」と注目してくる皆の顔が映る。


陛下の言っていた『完璧』というのは、ダンスのことか。

コレットがミネルヴァ夫妻に言われていたことを、陛下は聞いていたのだろうか。

なんてことだろう!レベルを上げられ、しかもこんなに注目を浴びるとは思っておらず、コレットはひどく焦ってしまう。

足がすくんで、覚えていたはずのステップもあやふやになる。

王妃がミスばかりをしたら、陛下も恥をかいてしまうのだ。

ミネルヴァやご令嬢たちの視線が、背中に刺さるように感じる。


音楽が終わり、皆が礼を取って中央から下がっていく。

ふたりだけが残る形になり、コレットは逃げ出したい気持ちと懸命に戦っていた。


「陛下、わたし、不安です……」


震えながらも素直に言うコレットの頬を、陛下の大きな手のひらが優しく包んだ。


「大丈夫だ、自信を持て。周りは気にするな。君は、私だけを見ていろ」