狼陛下と仮初めの王妃



けれどそんな気持ちとは裏腹に、陛下の力強い腕の中にいるのがとてもうれしくなる。

それと同時に安心感も生まれていることに気づく。

彼の腕の中にいるだけで、無敵になった気分になれるのだ。

彼は今までも頼れる国王陛下だったが、その感情とはまったく異質なもの。

コレットにとって、怖い狼のサヴァル陛下は、いつの間にか信頼のできる男性に変わっていた。


「それから、ミネルヴァ」


陛下の威光ある瞳がミネルヴァ夫妻を捕らえると、彼らの表情は苦々しいものから狼狽へと変わった。


「は……なんでございましょうか」

「私の妃は、完璧だ。貴様の曇りきった目を大きく開いて、よく見てるがいい」


陛下がコレットの体を少し離して小さな手を取ると、囲んでいたご令嬢たちが動いたので、ふたりの前に道ができた。


「え?完璧って、なにが??」


コレットのつぶやきは、大広間のざわめきに吸い込まれた。

陛下に誘導されるまま歩く方向に、楽し気にくるくると踊る皆がいる。

黄色に赤に緑、ご令嬢たちが身に着けた色とりどりのドレスがふわふわと揺れて、アクセサリーがキラキラと光っている。

その様子は、まるで楽園に咲く花が風に舞っているかのように目映い。