狼陛下と仮初めの王妃



若い侍女はコレットよりも二、三歳年上に見える。

にこにことしており愛想がよく、戸惑うコレットの手を引いて脱衣籠の前まで誘った。


「あの、準備っていったいなにをするんですか?あなたは?」

「私は侍女のリンダと申します。詳しいことは存じませんが、ここでお嬢さまの身なりを整えるように仰せつかっております」


身なりを整える……?

コレットは頭の中でその言葉を繰り返した。

城の中に入り陛下に謁見するためには、わざわざ身を清潔にして整える必要があるということか。

整えるというのは、もしや囚人服に着替えるということだろうか?

沙汰を言い渡されるだけなのに、こんな手順を踏むとは、やっぱり狼陛下は恐ろしい人なのだと改めて思う。

メガネの騎士は『すぐに帰れる』と言っていたが、果たして本当なのか。コレットは訝しく思い始めた。

そんなふうに悶々と考え事をしているうちに、身に着けていた木綿のワンピースはリンダの手によってするすると手際よく脱がされ、いつのまにか一糸纏わぬ姿になっていた。

慌てて露わになった部分を腕と髪で覆い隠して、頬を染める。