狼陛下と仮初めの王妃



ミネルヴァは一旦間をおいて、コレットの頭の上から足の爪先までを見、大袈裟に首を傾げて見せた。


「姿だけは美しく豪華で王妃然としておられますが、ご登場の折から不安そうにキョロキョロされてばかり……やはり、平民であられるお方には、華やかな場では、気後れされるのでございましょうなあ」


ミネルヴァは眉を下げ、気の毒そうな顔を作ってため息をついた。

それを受けて、婦人も眉を下げてコレットを見る。


「とても落ち着きがございませんもの。この様子でございますと、貴族として当然のたしなみも、できそうにありませんわねえ……」


ミネルヴァ婦人は大袈裟に首を振って、肩をすくめてみせる。

いつもながらふたりは、少しでも落ち度となる部分を探して攻撃し、コレットの立場を弱めることを狙っていた。

夫妻の隣では、娘のナタリーがサヴァル陛下をダンスに誘っている最中だ。

自分の娘ながら本当に美しく、陛下も一目惚れされること間違いないと思う。

自分の野望のためにも、邪魔なコレットは確実に陥れたいミネルヴァだ。


そんな夫妻の目は、まるで獲物を見つけた蛇のように不気味に見える。

コレットは、ふたりの嫌味攻撃に対してなにも言い返すことができずにいた。

集中力がなくてそわそわしているのは確かだし、ダンスも付け焼刃的に習ったのみだから皆のように上手く踊れる自信はない。

陛下は居並ぶご令嬢たちからダンスに誘われており、誰かの手を引いて中央まで出るのは時間の問題だ。

そう思ったコレットの体が、ぐっと陛下の方に引き寄せられた。