狼陛下と仮初めの王妃



ふたりはコレットの前に来ると、愛想笑いをして礼をとった。

ミネルヴァは、侯爵夫妻の相手をしている陛下を見て唇の端を歪め、コレットに向き直る。


「王妃さまには、祖国であられるハンネルとのご交流復活、大変喜ばしいことでございます」

「ありがとうございます。これも、ミネルヴァ大臣、あなたをはじめとする皆が努力してきたおかげだと思っています。王妃として感謝します」


コレットが微笑みながらそつなく返すと、ミネルヴァは少し眉をあげた。

まあ王妃としては合格の応対で、ハンネルとの国交復活に力を尽くしてきた彼にとっては、内心嬉しい言葉でもあるのだ。


「今夜の会は、王妃さまには社交デビューともなりますもの、私どもにとっては二重の喜びでございますわ!」


婦人が社交的に微笑むと、ミネルヴァも待ってましたとばかりに大きくうなずいた。


「そうでしたなあ。今宵は平民の王妃さまの社交デビュー……!なんと感慨深いことでしょう。我が娘がデビューしたときのことを思い出します。そう、あれは十歳の時でございました」


ミネルヴァは出てもいない涙を拭くように、指先で目頭を押さえた。


「ああ、ですが、なんてことでしょうか。このミネルヴァ、初めての夜会であっても、王妃さまはいつものように厚顔な落ち着きぶりをみせてくださると、安心しておりましたが……」