狼陛下と仮初めの王妃



コレットは、以前見た年表に死因不明と書かれていたことを思い出していた。

あれはどういうことなのか、陛下にはまだ尋ねていない。


「そうか、流行り病ね……あなたのためにも、この国のためにも、サヴァル陛下の世が長く続くことを願うよ」

「え……?それは、どういう意味ですか?」

「私はガルナシアの内部には口出しできない。だが、聡明な王妃であるあなただけに、忠告しておくよ。サヴァル陛下の身辺には、気を付けていた方がいい」

「え、あの、エドアールさま……?」


訳が分からないといった表情のコレットに対し、エドアールは至極真面目な顔つきのまま少し肩をすくめた。


「言ったそのままの意味だよ。まあ、隙のない彼ならば心配ないかもしれないな。さて、日が傾いてきた。私はそろそろ戻るよ。あなたとゆっくり話ができて楽しかった」

「あ……わたしこそ……ありがとうございます」


エドアールは謎めいた言葉を残したまま、騎士を従えて城へ戻っていく。

コレットは、その背中を見えなくなるまで見つめ続けた。

言葉の意味を考えると、胸の中にはどろどろと暗雲が立ち込めていく。


「まさか……彼は、なにかを知っているの?」


小さく呟いた彼女のもとに、話が終わるのを待ち構えていたリンダとマリアが駆け寄った。


「さあ、コレットさま。そろそろ夜のお支度しないといけません。お部屋に戻りましょう」


ふたりに促され、コレットは身支度を整えるべく、城へと脚を向けた。