狼陛下と仮初めの王妃



「先ほどあなたがこちらに向かうのを見て、追いかけてきました。迷惑でしたか」

「いえ、そんなことはありません。わたしも、エドアールさまとお話をしたいと思っていました」


エドアールはふわりと笑って、コレットからサーラの花に目を移した。


「このサーラは、我が国から友好の印として贈ったものです。この花は、食べられることを、あなたはご存知ですか?」

「はい……でも、毒があって、生のままではお腹が痛くなると聞きました」


ミネルヴァの意地悪を思い出し、コレットが微笑みながらも遠慮がちに言うと、エドアールは声を立てて笑った。


「そう。よくご存知だ。生だとひどい目に合う。試すのは、オススメしない」

「え?もしかして、エドアールさまは試したのですか?」

「ああ。だって、不思議だろう?火を通せば食べられるのに、どうして生じゃいけないのか。絶対にそんなはずはないと思うじゃないか」


エドアールは幼い頃、子守り役の爺の目を盗んでこっそり生で食べてしまい、三日三晩寝込んだ経験があると言った。

食べた瞬間に腹痛を起こして発熱し、ほとんど意識がなくて、苦しんだ記憶はあまりないそうだが。


「それは大変でした……でも、エドアールさまは、結構好奇心旺盛なんですね?」

「ああ、皆に心配をかけた。治った途端、爺に泣きながら叱られたよ」


病み上がりの幼児にはきつく心に染み込み、今もよく思い出すと言って目を細めた。