湧きあがる思いに蓋をするように、胸を押さえて深呼吸を何度も繰り返す。
そうして落ち着けば、再び外交のことに気が向き始めた。
さっきの陛下の表情はあまり変わらなかったけれど、紫の瞳は、謁見の間で皆に見せていた威厳ある狼の光は和らいでいた。
彼もコレットと同じく、緊張が解けたのだろうと思える。
考えてみれば、彼はもともと国王つき騎士団の団長だった人。
守りに徹するのみで、外交や政治とは無縁の生活だったのに、いきなり国王となって諸外国の王族方と交流せねばならないのだ。
そういう部分では、お沙汰で偽物王妃となったコレットの環境とあまり変わらないように思う。
けれども、彼の場合レベルがまるで違うのだ。
国の主として国賓を迎えるとなれば、国の内と外、両方から感じる圧力はコレットの想像などはるかに超えるものだろう。
自分の緊張や不安など、陛下のそれに比べれば砂粒よりも小さなものに違いない。
いや、砂粒ほどもないかもしれない。
それを肌で感じたコレットは、王妃としてできることを精いっぱいやろうと、改めて決めた。


