廊下を歩く間ずっと無言だった陛下は、王妃の執務室の前まで来ると、コレットの腰から手を離して向かい合うように立った。
「君は、時間まで自由にしていてくれ」
「自由って、なにをしていてもいいんですか?」
「私としては、君が執務室にいてくれるのが望ましいが、仕事はないはずだ。気分転換に庭を散策しててもいいぞ」
陛下は、初めての謁見は緊張しただろう?と言って、コレットの頬に優しく触れる。
伝わってくる温もりは、謁見の間で重ねられた手のひらを思い出させ、コレットは自然に陛下の服の端をきゅっと掴んでいた。
「今城にはハンネルの従者が多いから、普段よりも警備を厚くしてある。だが君は一度狙われているし、犯人はまだ捕まっていない。この機に乗じて、何事かが起きる可能性は否めない」
陛下は裏山で逃した者たちの目星はいくつかあって、それぞれ密かに監視をつけているという。
何か動きがあれば、すぐさま一報が入ることになっている。万全を期してあるが絶対安全の保障はないと、真剣な顔を見せる。
「だからもしも庭に出るなら、必ず、リンダとマリアを供につけるんだぞ」
「はい、陛下」
「私は今から、明日からの予定を大臣共と確認をしてこなければならない。いいか?」
そう言って陛下は自分の服を掴んでいる細い指を絡め取り、そっと唇を落とした。


