狼陛下と仮初めの王妃



「……父は、ミリガンと申します。お祝いをいただけるのは大変光栄なことですが、ふたりともに内戦で亡くしております」

「ふむ、ミリガン子爵……」


エドアールはコレットの顔を見つめながら、少し首を傾げた。

まっすぐに見つめてくる彼の青い瞳がコレットを調べているように感じ、手のひらにじわりと汗が滲む。

もしも彼が、ミリガン家など思いありませんと言ったら、どう返すべきか。

ミネルヴァは何かを感じ取ったのだろうか、にやりと笑いながらエドアールの様子を見ている。


「エドアール殿。ミリガンの子爵家はほぼ絶えていると、私は聞いている」


陛下がそう言うと、エドアールは納得したように大きくうなずいた。


「そうですか。私も末端の子爵男爵まで、すべての家名を把握しているわけではありません。しかし、ふたりともに内戦に倒れたとは、残念なことでした。王妃さまとは、後程ハンネルのことを語り合いたいものです」

「……はい、わたしはこの国で生まれ、両親の祖国のことをほとんど知らないのです。ぜひ、お話ししましょう」


なんとか切り抜けることができてホッとしながら笑顔を向けると、エドアールは陛下のほうに視線を戻した。


「エドアール殿、今宵はささやかな歓迎の会を催します。それまでは旅の疲れを癒すよう、ゆっくり過ごしてください」


丁寧に退室の挨拶をするエドアールに、ミネルヴァが近づいていき「部屋にご案内いたします」と言って一緒に出ていく。

扉が閉まるのと同時にコレットも陛下に手を引かれて玉座から立ち上がり、謁見の間から出た。