ツーッと肌を滑る指先からは甘い熱が伝わってきたけれども、陛下はとても真剣な表情をしていた。

最後に指先に唇を落とした陛下は、とてもホッとしたような表情をして言った。


『これからは、私が傍にいるとき以外、君には騎士をつけることにする』

『え……でも、お城の中は、安全でしょう?アーシュレイもいますし、外出するときだけでいいです』


騎士たちはお城の見回りや剣の鍛錬、それに近衛の騎士としての仕事などでとても忙しいはずだ。

一時的な偽物王妃の自分についてもらうのは、コレットにはどうにも気が引けてしまう。

アーシュレイだけはコレットの素性を知っているので、すごく気楽だから甘えてしまうが。

他の騎士たちは、コレットが陛下にミルクを浴びせてしまったあのときの娘で、偽物王妃だとは夢にも思ってないのだ。彼らは本気でコレットを敬ってくるだろう。


『駄目だ。君は、私の支配下にあるんだぞ。こればかりは、わがままを聞けない』

『でも、陛下。わたしは……』

『君に、拒否権はない』


唇を指先で止められて、厳しい顔つきでたしなめるように言う陛下の瞳にはぬくもりもあった。

陛下にとってコレットは、ガルナシアの大切な民の一人なのだ。

守る責務があるのだろうと思う。

お沙汰で城にいる身としてはなにも返す言葉がなく、コレットはおとなしく従うしかなかった。