「そんな話を耳にしても、一介の騎士にはなにもできない。大臣が王妃にサインをさせるのを歯がゆく見ているだけだった。そして気づけば、私腹を肥やしてぶくぶく太る大臣と、激化した内戦でボロボロになった国があった。このままでは国が駄目になる。そう思っていたとき、王妃が言ったんだ」
陛下は一旦間を置いて、言葉ひとつずつ区切って、噛みしめるようにゆっくり言った。
「“このままでは駄目です。わたくしよりも、国と民を守ってください。あなたが立ちなさい”と」
それは命令とも希望とも取れる言葉だったが、騎士団を近衛勤務から解放する意志も込められていた。
“自由に動きなさい”と。
自分が内戦を収めて政権を持てば、私腹を肥やす大臣たちを戒めて国を立て直すことができる。
だが、ただの騎士団長の自分に、そんなだいそれたことができるのか。
迷い悩むが、頼りになる参謀は団長が立つことを支持し、騎士の中から志のある者を集め始めた。
『内戦を収め、国を立て直す志があるなら、次の満月の夜に裏山に集え』
「今夜が満月という日。私は夕暮れ時にここに来て、街を見下ろしていた。賭けでもあった。一人も集まらなかったら、決起はできないからな。祈るような気持ちで騎士たちを待った」


