狼陛下と仮初めの王妃



「そうか……だが、私は皆が思うほどに立派じゃないぞ。弱いところもある」


だから、ここに来て原点に帰るんだ。

そう言う陛下の頬が髪にうずめられているのを感じながら、コレットはふと疑問に思った。

均衡していた勢力の中に騎士団が加わったのは、内戦が始まってだいぶ経ってからだ。


「どうして陛下は、騎士団を率いて立ったのですか?」


すると陛下は「ちょっと待ってろ」と言って馬から下り、コレットもそっと地面に下ろした。

草がコレットの脚をくすぐり、土の柔らかさが伝わってくる。

そんな久しぶりの感覚を小さく喜んでいる彼女に、陛下は語り始めた。


「国王が不在だった当時、王妃が政権を持っていた。だがそれは表向きで、事実上政務を執り行っていたのはミネルヴァたち大臣だ。私たち騎士団は王妃とともに城を守り、政務を見守っていた。当初の頃は、大臣共の『内戦を収める』の言葉を信じていたな。だが、君も知っての通り、内戦は収まるどころか激化していった」


当時は、大臣らが作った政策を王妃がサインをするだけで国が動いていた。

王妃は政治のことを何も知らず、大臣らに求められるままサインをしていた。


「そのせいか、人々の暮らしは苦しくなっていった。街の酒場に行けば、政治の悪さを嘆く声が多く聞こえた」


コレットの父も政治の悪さを嘆いていたのを思い出していた。

夜遅くまで母と話をしていたことを覚えている。